11月23日(水)~12月2日(金) @art speace kimura ASK?(2F)+ASK℗ (B1F)
11:30-19:00※最終日17:00まで
菅谷杏樹 個展「霧を縫う」@art speace kimura ASK?(2F)
■展覧会ステートメント
古来より人間は異種の生き物と生活を共にしてきた。それらは共に生きることでお互いの命を繋いでいく存在であった。
現代では失われた「養蚕」は日本の近代化を支えた重要な産業である。人々はその虫を「オコサマ」と呼び、各家庭で大切に育てた。大量の虫を育て、家の中で共に暮らす生活とは一体どのようなものだっただろうか。その生活の中で蚕と人は一体どのような関係性を築いていたのであろうか。
本展は菅谷の祖母の幼少期の記憶「糸を吐くおばあさん」を軸に、その記憶を再現した映像作品、高祖母が作った着物、菅谷自身が育てた繭、生糸を使用したインスタレーションで構成される。失われてしまった生活と、その感覚を作品を通して浮かび上がらせ、人間中心主義の現代における異種と人との関係を模索する。
■プロフィール
菅谷杏樹(すがや・あき)
東京都檜原村に拠点を 持ち、山の生活を営みながら、養蚕、養蜂、農業などを実践する。民間伝承や民族文化のリサーチから、人間中心主義における異種との関係性をテーマに主に自然物や映像を使用したインス タレーション作品を制作する。2022年東京藝術大学大学院美術研究科修了。 主な活動として個展「Ambrosia」(myheirloom/3331アーツ千代田/2022)、グループショー「科学と芸術の丘2022」(戸定邸松戸/2022)、「ひのはらアートプロジェクト」(檜原村/2022)「CAF賞 2018」(代官山ヒルサイドフォーラム/代官山/2018)、などがある。
岡ともみ 個展「誰そ彼時の部屋」@ASK℗ (B1F)
■展覧会ステートメント
水は誕生と死、この世とあの世など、相反する概念の象徴として受け取られ、その本質に境界性をもっている。水は生命や並外れた価値が誕生する場所として、しばしば神話や文献の中で象徴的に扱われると同時に、舟葬や流し雛、流し灯籠などの行事にも見られるように、川から海へと繋がり、あの世へ流れていくものとしても扱われる。また、川は物質の輸送や人が往来する交通路であるだけでなく、空ー山ー川ー海の流れの中間に位置する。現実的な空間でありながら空と海という「あの世」との繋がる場所への橋渡しをする、いわばこの世とあの世の境界にある存在である。
展覧会のタイトルとなっている「誰そ彼時」とは現代の「黄昏時」の元になったとされる言葉である。明るい昼の時間帯から、夜の時間へと変化する狭間には、「誰そ彼」、つまり「あの人は誰なのか」、と、知っている者が知らない者になり、通常の世界が異界をはらむ時間がある。本展覧会では、それ自信が境界性を内包した「水」という存在が、誰そ彼時の光にあたり、その動きを変化させていく。
岡は、自身の作品の中で、「反転」をひとつのキーワードとして扱ってきた。時の反転、動きの反転、像の反転。反転は、日常の一部を回転させ、見慣れたものを異化する作用を持っている。前作「サカサゴト」(2022)では、死人が出た時に日常の動作を逆に行うという日本の古い風習を扱った。そのような日本の古来からの考え方は、蛍光灯のなかった時代の日本家屋の中で光と闇がより近しい存在だったように、日常と異界が隣接し、同時に息づいていた世界を思わせる。岡の作品では、空間にある種のイリュージョン性を持たせながら異化する手法と、異界と共に暮らす古来の日本の姿とが現代の空間で出会い、消えかかる習俗のモニュメントのように立ち現れるのである。
■プロフィール
岡ともみ(おか・ともみ)
時間・記憶・反転・光と影をキーワードに、「小さなモニュメント」を作ることをテーマに制作をしている。誰かにとって大切な個人の思い出や、消えかかっている風習など、ともすると世界から見過ごされ てしまうような小さな物語を封入した装置を作り、ある種のリアリティをもった記憶の空間を場に立ち上げることを試みる。2019年ベルリン芸術大学留学を経て、2022東京藝術大学大学院美術研究科修了。現在同研究科博士後期課程在籍。主な活動として、オープン・スペース2018/2019(初台・ICC)、個展「どこにもいけないドア」(2018・ASK?P 京橋)など。2022年三菱地所賞受賞、同年shiseido art egg入選。