2023年7月10日(月)-7月15日(土)
本展は、江戸城跡地(皇居)を囲む濠をぐるりと撮影したものを素材としたインスタレーションです。名と場所をテーマとしたフィールドワークから出発しつつも、そこで私の興味をひいたのは城郭の円環構造であり、濠-石垣-木立のミニマルなイメージの反復でした。「パラダイスの戦略」というタイトルはここから来ています。パラダイスの語源はイラン祖語*paridayjahまで遡り、「壁で包囲された場所」という意味で、中の様子を伺えない、到達・侵入できない、触れえない、そういった場所のことです。パラダイスはまずは禁域ですが、その境界が空間的・時間的にひろがれば、それは聖域、楽園、桃源郷、ユートピアといったものになり、語られる存在となってゆきます。古来、私たちは、パラダイス的な距離に魅了されてきたわけですが、それは、現代の電子的アーカイヴへとの関係をも遠くから規定しているのかもしれません。そこに「ない」ことで「ある」。それがパラダイスというものではないでしょうか。本展では、江戸城跡地(皇居)をパラダイスに見立て、その断片・配列を異なるパラダイスへと逸脱させることが目論まれています。