「それはようやく2ページのマンガを描いた」-人工知能画家・静 11 号展


2021年11月8日(月)~11月13日(土)

open : 11:30~19:00 ( 最終日17:00まで )

会場 : ASK℗(B1F)

人工知能画家・静(しずか)は自律的に絵を描くコンピュータ・プログラムです。

静は 2000 年より制作を開始し、様々な変遷を経て現在は 11 号です。かつては一枚の絵画を描くプログラ ムでしたが、連続した絵画すなわち物語を扱うために 8 号からマンガを題材にしました。マンガの記号的かつ柔軟な表現力は挑戦しがいがあると思ったからです。ヒトは、素材となる様々 な情報を取り入れて、自分なりに消化しオリジナルの作品を作ります。そこで静でも、既存の マンガを分析することによって、新しいマンガの物語を作ることを試みています。 完全に自律的に描くこと実現はまだ先の話ですが、今回の展覧会ではコマワリまでを行いま した。静はこれまで「読んだマンガ」を知識として蓄えており、会話文を入力しそれらを分割 することによって、その知識から「表情」と「姿勢」と「コマ」を判定し妥当なマンガを生成 します。今回の展示では一つの会話文から生成された様々なマンガを展示します。同じ会話文 でもコマワリの違いによって印象が変わることをご確認いただければ幸いです。 静の制作目的はヒトの創作行為の本質を知ることです。学習型モデルの人工知能を用いて、 コンピュータとヒトを対比させると、ヒトの創作行為をコンピュータで置き換えられる部分と 置き換えられない部分が明確になります。この違いを考察することは、ヒトの創作行為の本質 を知ることにつながります。今回コマワリまで行えるようになったことで、明らかになったこ とは発想と意図は未だヒトを必要としていることです。会話文はヒトが与える必要があります し、コマワリによる印象にはヒトの意図が必要になるからです。つまりやっとそれなりのマン ガを描くようになっただけで何をどう「表現したい」のかということはまだこの人工知能は持 っていないことがはっきりしました。今後はこの「表現したい」つまり創作欲求を人工知能は 獲得できるのかを考えてみたいと思います。

このように私にとって人工知能画家は、ヒトの認知と表象の哲学的探求であって、ヒトを超 える創作機械を作る事ではありません。そして、このような展示が訪れた人の知的好奇心を刺 激する事につながればよいと考えます。

生成された例(宮沢賢治「銀河鉄道の夜」より

略歴

迎山和司

  • 公立はこだて未来大学システム情報科学部情報アーキテクチャ学科 教授
  • 1968 年 兵庫県神戸市生まれ
  • 1998 年 カリフォルニア大学サンディエゴ校芸術電算研究所客員芸術家
  • 2000 年 プリ・アルス・エレクトロニカ
  • 2000 ネット部門 入賞
  • 2001 年 Siggraph2001 アートギャラリー 選出
  • 2002 年 第 10 回フィンランド人工知能学会全国大会 論文採択および口頭発表
  • 2008 年 ISEA2008 口頭発表 (シンガポール)
  • 2011 年 FILE2011 選出 (サンパウロ/ブラジル)
  • 2013 年 SiggraphAsia2013 アートギャラリー 選出 (香港)
  • 2016 年 パリ東大学マルヌ=ラ=ヴァレ校 IMAC 招待講師
  • 2019 年 個展「人工知能画家・静9号」 (Art Space Kimura ASK?P)
  • 2020 年 手塚治虫 AI プロジェクト TEZUKA2020 参加 2020 年 個展「人工知能画家・静 10 号」 (オンライン展示)

本展覧会では学術発表を目的として,青空文庫およびデータセット Manga109 を利用規約に従 い引用しています

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