岡本 羽衣 × 青木 薫 ふたり展


2013年2月11日(月)〜2月16日(土) 月曜・祝日開廊
open : 11:30〜19:00(最終日17:00まで)

会場 : art space kimura ASK? (2F)

青木薫と岡本羽衣。この二人は昨春大学を卒業したばかりの表現者。ともに生きることに真摯な若者らしく、社会と人間存在の関係、あるいはその距離に対する戸惑いが制作の拠り所にある。

 青木が制作するのは大小の歯車がかみ合って回転する背景(恐らくは世間)のなかに出現し、蹲り、歩み、臥し、そして埋もれてゆく裸形の女性のアニメーション。またボールペンで精緻に描かれ多様な姿態をとる女性たち。その情感は決してウェットではないが強烈なリアリティを持ち合わせている。彼女にとって制作とは生きることと同価値なのだろう。

 岡本は社会学を学ぶ一方で特に写真による表現活動を追求してきた。並外れて鋭敏な彼の感性が幼少時から現在にいたるまでに経験した人間悲喜劇、あるいは自分を巡る日々の生活を素材とし、それらを解体し、分析する。この新作では、暗闇の中で起きる意識の変成に題材をとる大画面の画像と細かくモンタージュされた映像を発表する。

 我々はこの二人の表現を世間に紹介したい。それは混迷と未熟さの中に表現者としてのもどかしくも真摯な誠実さをみるからだ。

                                    (和光大学教授 半田滋男)


【作家略歴】


◆岡本 羽衣 (おかもと はごろも)
1990 長野県生まれ
2012 和光大学現代人間学部現代社会学科卒業
<活動歴>
2011 「和光大学映像作品上映+作品展 Focusless」 川崎市アートセンター(神奈川)
2012 和光大学表現学部芸術学科卒業制作展「404 Not Found」 BankART Studio NYK(神奈川)



・ "深く沈む" 1250x1250mm (x2), Type-C print, 2013
・ "遥かなり遥かなり" 2012


<作品内容>
夜、横断歩道の前で歩行者用の信号が青に変わるのを待っていた。
その( 間)、電柱に取り付けられた黄色い障害者用ボタンから単発的な電子音が繰り返し鳴っていた。切れかけた一本の街灯から白い光が点滅していた。
信号が青に変わったので向こうの歩道にむけて歩きだした。前に進むと、いままで聴こえていた電子音は徐々に遠のき、それと同時に向こうの歩道にある信号機の柱から同じ電子音が聴こえてきた。
ちょうど横断歩道の中央に立つと、後ろから聴こえる音と前の音の大きさが同じになった。
その瞬間、この肉体がこの暗い夜に溶け込んでしまったような錯覚に陥った。A 点からの音とB 点からの音が同じくして聴こえるC という地点にいる自分という実体は消えてしまっていたのだ。

点滅する切れかけた蛍光灯の光はこれと同じような感覚を与える。
点灯している( 間) は私を照らしてそこに現れているが、光を失えば私という実体も消えているのだ。
光が消えたその一瞬の間 ( ま) のあいた空白では、まるで私の肉体が無数の虫たちによって形作られていたかのように分解し、細胞の分子が散っていくのである。
そして、再び光が点灯すると埃のように空気中を浮遊したつぶみたいな分子は集合を始め、私の身体を形成していく。この運動を繰り返し、瞬く点滅の中で行われているのである。

我々の実体は、本当は光があたり外的世界に表象しているときだけ我々の目に写っているのである。
瞬く光の( 間) に沈黙があり、その僅な( 間) に身体は背景へと沈んでいく。
そこは光が閉ざされた暗い場所で、そこは洞窟に似ている。
気がつくと私はいつの間(ま)にか洞窟にいた。まるで胃の中のようなぬめりをもった洞窟で自分の呼吸だけが聴こえる。
再び蛍光灯が点灯して自分自身の身体を取り戻すまで、私はここで息を潜めていた。



◆青木 薫(あおき かおる)
1989 東京生まれ
2008 都立農業高等学校服飾科卒業
2012 和光大学表現学部芸術学科卒業
<活動歴>
2007  「キチガイbrotherGIRL NEXT DOOR」  ノンク・プラッツ東京(東京)
2009  「DesignFesta vol.30」  東京ビッグサイト(東京)
2010  「このたびは」  和光大学アートプランニング室(東京)
2012  和光大学表現学部芸術学科卒業制作展「404 Not Found」  BankART Studio NYK(神奈川)

 
「ぐるん」/ マーメイド紙, ボールペン,         「どくんどくん」
鉛筆. アクリル絵の具/ 79×54.5cm/ 2012    / 202,9mmx238,2mm/ endless/ silent /color /2012


<作品内容>
2人展の共通テーマは「身体」。
そこから更に自分の中で「柔軟+赤いリボン」というテーマをつくった。
柔軟の人物を描いたのは、普段目にする事のない(非現実)美しい(自分は美しいと感じている)フォルムを見てもらいたいため。そこに生きる上で必要不可欠な血液=赤いリボンをプラスした。



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