青木薫と岡本羽衣。この二人は昨春大学を卒業したばかりの表現者。ともに生きることに真摯な若者らしく、社会と人間存在の関係、あるいはその距離に対する戸惑いが制作の拠り所にある。 青木が制作するのは大小の歯車がかみ合って回転する背景(恐らくは世間)のなかに出現し、蹲り、歩み、臥し、そして埋もれてゆく裸形の女性のアニメーション。またボールペンで精緻に描かれ多様な姿態をとる女性たち。その情感は決してウェットではないが強烈なリアリティを持ち合わせている。彼女にとって制作とは生きることと同価値なのだろう。 岡本は社会学を学ぶ一方で特に写真による表現活動を追求してきた。並外れて鋭敏な彼の感性が幼少時から現在にいたるまでに経験した人間悲喜劇、あるいは自分を巡る日々の生活を素材とし、それらを解体し、分析する。この新作では、暗闇の中で起きる意識の変成に題材をとる大画面の画像と細かくモンタージュされた映像を発表する。 我々はこの二人の表現を世間に紹介したい。それは混迷と未熟さの中に表現者としてのもどかしくも真摯な誠実さをみるからだ。
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