■内容
人工画家・静(しずか)は自律的に絵を描くコンピュータ・プログラムです。
これは与えられた画像をそのままなぞって描くのでは なく、外界から視覚情報を獲得し、
概念として蓄え、再構成したものを描きます。この学習から描画までの一連の過程は人の
認知的行動に基づいて制作しています。静は2000年より制作を開始し、様々な変遷を経て
現在は7号になっています。この作品の目的は、人間の創造の源泉について考えることです。
情報処理技術によって人間の創作行為もある程度自動化することができますが、
ではどこまで機械に任せることができるのかを見極めることによってそのことを考えます。
特に注目していることは人間の想像力です。例えば翼の生えた馬のように人間は現実に
はいない生き物を想像することができます。 このような幻想の生成は人間が描くことが出来る
絵画の特徴の一つです。この実現のために、静7号には素材として極大量の画像を与えています。
静7号はその画像一つ一つを細かなパーツに分解し蓄えています。そしてある画像が選ばれると、
分解されたパーツの接続情報に基づいて似たような接続情報を持つ画像と組み合わせます。
このように静7号にプログラムされた行為としての知識は極僅かですが、素材は極大量に
獲得されているので、結果はバラエティに飛んだものになります。
今回の展覧会では静7号によって描かれた絵画の展示とその解説に加え、実際に
コンピュータ上で動作する静7号のデモンストレーションを行います。
■作家略歴
公立はこだて未来大学システム情報科学部情報アーキテクチャ学科 インスタレーション (撮影:来田猛)
1968年 兵庫県神戸市生まれ
1993年 京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻造形構想 修了
1993年 京都市立芸術大学作品展 大学院市長賞 (京都市美術館)
1998年 カリフォルニア大学サンディエゴ校芸術電算研究所客員芸術家 (サンディエゴ/アメリカ)
1999年 国際交流基金海外人物派遣フェローシップ 授与
2000年 プリ・アルス・エレクトロニカ2000ネット部門 入賞 (リンツ/オーストリア)
2000年 ASCI's Digital'2000 Competition 入賞 (ニューヨーク/アメリカ)
2001年 企画展「Subverting the Market」 選出 (中央ミシガン大学アートギャラリー/アメリカ)
2001年 Siggraph2001アートギャラリー 選出 (ロサンゼルス/アメリカ)
2002年 ヘルシンキデザイン芸術大学(現アールト大学)メディアラボ 留学 (ヘルシンキ/フィンランド)
2002年 第10回フィンランド人工知能学会全国大会 論文採択および口頭発表 (タリン/フィンランド)
2003年 公立はこだて未来大学システム情報科学部情報アーキテクチャ学科 講師
2003年 情報処理推進機構未踏ソフトウェア創造事業 採択
2004年 京都市立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了 博士(美術)学位取得
2005年 中山科学振興財団研究助成 採択
2008年 ISEA2008 口頭発表 (シンガポール)
2009年 Smart Graphics 2009 Art Track 選出 (サラマンカ/スペイン)
2010年 Generative Art 2010 展示および口頭発表 (ミラノ/イタリア)
2011年 FILE2011 選出 (サンパウロ/ブラジル)
2011年 ルネサンス ─京都・映像・メディアアート展 (京都芸術センター)