地球観測日和-Kanazawa Satellite Art Project

2010年 7月5日(月)〜 7月17日(土)
11:30〜19:00(最終日17:00まで)

遠く宇宙からカメラを構え、金沢の休日を写そうと思い、5月1日を選んで撮影を行った。NHKニュースを通じて事前の告知が行われ、この撮影の同日同時間帯に地上で撮られた約2000枚の写真が、市内の多くの協力者から届けられた。上空からの撮影の為に、地球観測衛星への観測要求を行い、地上での撮影においては金沢を良く知る市民の協力を得て、衛星による観測写真と地上での撮影の時間をシンクロさせた映像作品"Kanazawa/May 1, 2010"が完成した。
地球観測衛星に搭載されたセンサーにより地上の様子を捉えて画像データを作成するASTERと呼ばれるシステムがある。これまで、このシステムへの観測要求は、資源や環境の調査、自然災害への対応など様々な分野から行われてきた。Kanazawa Satellite Art Project(代表:鈴木浩之)は、(財)資源・環境観測解析センター(以下ERSDACと呼ぶ)の協力により「アート活動を目的としたASTERへの観測要求(日本初)」を行った。今後、地上絵によるアニメーション撮影などが計画されており、リモートセンシング技術の美術分野への応用が試みられる予定だ。  "Kanazawa/May 1, 2010"は、マルチ・チャンネルの展示による映像作品で、メインの画面には2010年5月1日午前10時51分に上空から観測された金沢市とその周辺地区の画像がゆっくりとスクロールするように映し出される。この脇には、市民マラソンや結婚式、釣りを楽しむ様子や観光に訪れた人々等、金沢市内で撮影された休日のスナップ写真(400枚で構成)が時間軸にそって次々と表示される映像が流れる。衛星画像の撮影を切掛けとして、学生や市民がデジタルカメラや携帯電話のカメラ機能を使って街のありのままの魅力をフレームに切り出し、衛星写真の大きな視点とこれらが組合わさることで、新たな映像表現が生まれた。このプロジェクトは、場所を移し、様々な国や都市で、地域の魅力を参加者自ら発見する活動として展開する予定だ。
 地球観測衛星への観測要求を伴うアートは、大きな可能性を持っている。ナム・ジュン・パイクが「サテライト・アート」で用いた映像の中継地点としての人工衛星は、時代とともにその役割が多様化している。現在では様々なセンサーを駆使して映像を生み出すカメラが運用され、我々の日常を捉える眼として常に上空を巡っている。この視点は、人それぞれの生活域の認識や大地と人との関係性に対する考察に強い影響を与える可能性を秘めている。衛星の機能の変化と共に、サテライト・アートも徐々に変化しているのではないだろうか。
 今回のプロジェクトにはERSDACの協力が不可欠だった。サポートが充実し、全面的なバックアップが得られた。金沢市民、金沢在住のアーティストの協力は、このプロジェクトの意義を高めた。金沢美術工芸大学の学生、及び教職員の有志により、この活動が大きく前進した。
 金沢の5月の休日は、様々な人々の思いと好天に恵まれた、まさに「地球観測日和」だった。

鈴木浩之




(C)METI and NASA 2010 / Distributed by ERSDAC


【Kanazawa Satelite Art Project のサイト】 http://web.me.com/settimo20019/Kanazawa_Satellite_Art_Project/
【作家略歴】 鈴木浩之(すずき・ひろし)
1972年静岡県生まれ
2000年金沢美術工芸大学大学院博士後期課程修了 学位取得
2001年から2003年イタリア国立美術学院ブレラ留学
2005年"日韓友情2005記念事業 鈴木浩之個展"/Galerie PICI(ソウル)
2006年"Asiana"Fondazione MUDIMA(ミラノ)
2006年第10回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品
2008年"Pangea"鈴木浩之個展/Galleria Formentini(ミラノ)
2008年《曖昧な領域》ambiguous domain 〜 伊藤英高 VS 鈴木浩之/ASK?
2008年第12回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品
2009年"鈴木浩之展"/ASK?
2009年"Milano-Athina"/CAID(アテネ)

映像を中心にしたインスタレーションによるメディア・アート作品を制作。 文化庁メディア芸術祭などに出品したほか、ソウル、イタリア、ギリシャ、スペインなど海外での作品発表を行っている。 現在、金沢美術工芸大学准教授。
【作家 WEB】 http://web.me.com/settimo20019/suzuki


TOP