藤幡正樹「無分別な鏡」-Unreflective Mirror 2005- 

鏡という概念は、対象のイメージを正確に写し取るといった場合にむしろ良い意味で使われます。
ダビンチも画家は鏡のように対象を描かなくてはならないと書いています。
ここで展示しようとしている装置は、鏡の機能をVRの技法によって再現しようとしたものですが、それは鏡のふりをしているに過ぎないので、さまざまな不都合が起こります。
鏡の構造は極めて単純ですが、これは現実がそのまま写し込まれただけなので、現実が抱えている視点の問題がそのままひきづられています。これをVRの技術で再現するには、立体視を実現するために、ユーザーは特殊な眼鏡をかける必要があります。
さらにその眼鏡の空間的な位置情報が必要でそのための仕組みも必要になります。
結局のところ、現実の側にあるものの内空間的な位置を取得できるものは写し込めますが、そうでないものは写し込むことが不可能であるという状態が生まれます。
展示物として何が選択され、何が選択されないか、分別ない装置ができあがることになるでしょう。  
(藤幡 正樹)

藤幡正樹 Masaki Fujihata メディア・アーティスト
1956年 東京生まれ。 東京芸術大学美術学部先端芸術表現科教授 
80年代初頭からコンピュータ・グラフィックスとアニメーションの制作、その後コンピュータを使った彫刻の制作を経て、90年代からはインタラクティブな作品を順次に発表。ネットワークをテーマにした作品 「Global Interior Project#2」は、1996年にリンツ、アルスエレクトロニカでゴールデン・ニカ・グランプリを受賞。インタラクティブな本をテーマにした作品 [Beyond Pages] がヨーロッパ、アメリカを巡回して、1997年ドイツにあるメディア・アートのセンターZKM (Center for Art and Media) のパーマネントコレクションになる。また1998年にはZKMに客員芸術家として滞在。2000年、妻有アートトリエンナーレで中学生と一緒にGPSを使ったワークショップを展開。著書に「Geometoric Love」パルコ出版 「禁断の果実」リブロポート 「未来の本の未来」「巻き戻された未来」「CGの軌跡」ジャストシステム 「カラー・アズ・ア・コンセプト」美術出版社  「アートとコンピュータ」慶応大学出版会  他 CD-ROM作品に音楽家の古川聖、Wolfgang Muench との共作で「Small Fish」ZKM/Cantz刊などがある。
藤幡 正樹 HP http://www.fujihata.jp/

ASK? art space kimura/アスク・アートスペース キムラ