「用件を聞こうか?―さいとう・たかをが目指したこと」-人工知能画家・静 12 号展

202210月31日(月)~11月5日(金)日曜休廊

open : 11:30~19:00 (最終日は17時まで)

会場 ASK℗ (B1F)

人工知能画家・静(しずか)は自律的に絵を描くコンピュータ・プログラムです。

静は 2000年より制作を開始し、様々な変遷を経て現在は 12 号です。かつては一枚の絵画を描くプログラムでしたが、連続した絵画すなわち物語を扱うために 8 号からマンガを題材にしました。マンガの記号的かつ柔軟な表現力は挑戦しがいがあると思ったからです。

ヒトは、素材となる様々な情報を取り入れて、自分なりに消化しオリジナルの作品を作ります。そこで静でも、既存のマンガを分析することによって、新しいマンガの物語を作ることを試みています。静はこれまで「読んだマンガ」を知識として蓄えており、会話文を入力すると、その知識から「表情」と「姿勢」と「コマワリ」と「コマ構図」を判定し妥当なマンガを生成します。

今回の展覧会では、さいとう・プロダクションの協力によって、『ゴルゴ 13』の画像を分析しました。ご存知のように、劇画家さいとう・たかを先生は分業によるコミック制作体制を確立したパイオニアです。そして、制作工程では主に構成(「コマワリ」と「コマ構図」)を行っていました。今回の静は『ゴルゴ 13』の構成を引用します。つまり、さいとう・たかを先生の構成の再現を行っていることになります。今回の展示で、会話文から生成されたさいとう先生による構成の新たな劇画をご確認いただければ幸いです。

静の制作目的はヒトの創作行為の本質を知ることです。学習型モデルの人工知能を用いて、コンピュータとヒトを対比させると、ヒトの創作行為をコンピュータで置き換えられる部分と置き換えられない部分が明確になります。この違いを考察することは、ヒトの創作行為の本質を知ることにつながります。今回『ゴルゴ 13』を分析することによって、ある部分には分業のための共有規則があり、ある部分には作家自身の「表現したい」意図があることがおぼろげながらわかってきました。

今後もより一層この「表現したい」つまり創作欲求を人工知能は獲得できるのかを考えてみたいと思います。 このように私にとって人工知能画家は、ヒトの認知と表象の哲学的探求であって、ヒトを超える創作機械を作る事ではありません。そして、このような展示が訪れた人の知的好奇心を刺激する事につながればよいと考えます。

■略歴

公立はこだて未来大学システム情報科学部情報アーキテクチャ学科 教授

  • 1968 年 兵庫県神戸市生まれ
  • 1998 年 カリフォルニア大学サンディエゴ校芸術電算研究所客員芸術家
  • 2000 年 プリ・アルス・エレクトロニカ 2000 ネット部門 入賞
  • 2001 年 Siggraph2001 アートギャラリー 選出
  • 2002 年 第 10 回フィンランド人工知能学会全国大会 論文採択および口頭発表
  • 2008 年 ISEA2008 口頭発表 (シンガポール)
  • 2011 年 FILE2011 選出 (サンパウロ/ブラジル)
  • 2013 年 SiggraphAsia2013 アートギャラリー 選出 (香港)
  • 2016 年 パリ東大学マルヌ=ラ=ヴァレ校 IMAC 招待講師
  • 2019 年 個展「人工知能画家・静9号」 (Art Space Kimura ASK?P)
  • 2020 年 手塚治虫 AI プロジェクト TEZUKA2020 参加
  • 2020 年 個展「人工知能画家・静 10 号」 (オンライン展示)
  • 2021 年 個展「人工知能画家・静 11 号」 (Art Space Kimura ASK?P)
  • 2022 年 池袋アートギャザリング公募展漫喜利部門入選(奨励賞 )

本展覧会ではさいとう・プロダクションの協力により『ゴルゴ 13』の画像を利用しています。 また、学術発表を目的として、青空文庫およびデータセット Manga109 を利用規約に従い引用しています

カテゴリー2022